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2024.04.24
日本スポーツ社会学会の2023年度学生研究奨励賞(論文部門)において、スポーツとジェンダー平等国際研究センターのポストドクター研究員の宮澤優士さん(筑波大学大学院人間総合科学研究群)の論文「サーファーが環境保全を訴えるとき —千葉県長生郡一宮町の事例から—」が第1位を受賞しました。
【選考委員会講評】
まずはじめに、今回の検討対象となった6論文はいずれも非常にクオリティが高く、良い意味で選考が非常に困難であったことをお伝えしておきます。
そのような優れた研究の中で最も高く評価された宮澤優士氏の論文「サーファーが環境保全を訴えるとき—千葉県長生郡一宮町の事例から—」は、サーファーによる環境保全運動をめぐって、サーファーと地域住民や専門家との間にどのような議論がなされ、何が問題とされ、どのような結論が導かれたのかを検討することで、サーファーによる運動の困難性および可能性を示そうとした意欲的な研究です。
研究目的の明解性や先行研究の検討の着実性、論文全体の論理性などが高く評価された本研究ですが、とりわけ高く評価された点は、象徴的な会議の議事録や対象地のサーファー事情を深く知る代表的な住民を対象としているという点における研究方法の妥当性でした。また、そうしたサーフィンを巡る当事者たちの主張を粘り強く拾い上げたという分析の着実性も高く評価されました。
本論文の興味深い点は、サーフィンを環境保全運動の手段としてのみ注目するのではなく、サーフィンというスポーツの魅力を明らかにし、その魅力が環境保全運動が目指す理念とどのように結びつくのかを検討したことです。そして、サーファーの経験知が工学的な知と衝突し、工学の側の変容をもたらしたという分析結果は非常にスリリングであり、かつ示唆に富むものでした。
本研究の知見は、今後、他地域の事例と突き合わされることで、より深まっていくと思われます。今後の研究の着実な進展を期待しています。